【自由民主党・特別支援教育小委員会】
提言「特別支援教育の更なる充実〜自立と共生を目指して」

 

             平成20年6月10日
             自由民主党文教制度調査会・文部科学部会
                  特別支援教育小委員会(委員長:馳 浩)
 

 特別支援教育は、一人一人の教育的なニーズに対応した教育や支援を行う という理念の下、平成19年度から新たな制度としてスタートし、1年が経 過した。

 我が党においてはこれに先立ち、平成18年10月26日に特別支援教育 小委員会を設置し、以来、平成19年5月11日には、報告「美しい日本に おける特別支援教育」をとりまとめ、平成19年12月5日には、「特別支 援教育予算の確保に関する決議」を行うなど、一貫して特別支援教育の充実 を求めてきた。

 今回、特別支援教育元年の成果と課題について検討を行い、平成21年度 に向けて「特別支援教育の更なる充実」について次のとおり提言する。

 

【提 言】

(1)特別支援教育の更なる充実

 「特別支援教育元年」の平成19年度、特別支援教育については、@小・中学校等における体制整備が一定程度進捗したこと、A特別支援教育支援員に対する地方財政措置がスタートしたこと、B小・中学校等教員の特別支援教育に対する関心が高まったことなど、重要な一歩を踏み出したものと評価している。しかし、我々の目指す特別支援教育の理念、「自立と共生」を目指すきめ細かな教育の実現という観点からは、これらの取組はまだ緒についたばかりであり、今後、更なる特別支援教育体制の整備、障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた計画的な指導や教材提供など、質的に充実した特別支援教育を推進していくべきである。

 また、特別支援教育が目指す一人一人の教育的ニーズに応じた支援、指導方法の工夫は、現在、学校現場が抱える課題の解決につながるものであり、特別支援教育を学校教育再生の大きな戦略として位置づけ、その充実を強力に進めて行くことが必要である。

 

 

(2)優先的に取り組むべき課題

 @ 計画的な教員定数の改善

○通級による指導に係る教員定数の拡充や専任の特別支援教育コーディネーターを配置するための定数措置など特別支援教育に係る計画的な教員定数の改善を図るべき。

※特別支援教育コーディネーター……学校内の関係者や関係機関との連絡調整、保護者からの相談窓口等、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う者

 

 A 特別支援教育コーディネーターの充実

○特別支援教育コーディネーターについては、職務の重要性に鑑み、専門性の向上を図るとともに、期待される多岐にわたる職務を十分に果たせるよう、学校内での役割、校務上の位置づけの明確化や専任配置のための定数措置を図るべき。

 

 B 特別支援教育支援員の拡充

○特別支援教育支援員については、喫緊の課題である早期支援や高校段階で  の発達障害支援の観点から、幼稚園及び高等学校について、新たに地方財  政措置を行うべき。また、小・中学校については、地域によって取組に差  が見られることから、各市町村の取組を強力に促していくことが必要。

 ※特別支援教育支援員……小・中学校等に在籍する障害のある児童生徒に対して、学校教育活動上の日常生活の介助や学習生活上のサポート等の支援を行う者

 

 C 入学者選抜等における配慮や支援

○高等学校及び大学の入学試験等において、発達障害についても必要な配慮や支援が行われるよう必要な措置を講じるべき。

 

 D 教職員の専門性の向上

○幼稚園から高等学校までの管理職、特別支援教育の担当教員、通常の学級の担当も含め全ての教員が、それぞれの職責に応じた内容の特別支援教育の研修を受講できるようにする。特に、校長、教頭の姿勢が特別支援教育の推進に大きく関わることから、全ての管理職が特別支援教育に対する理解を深めるよう取り組む。

さらに、特別支援教育担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率向上を図るための取組を進めるとともに、特別支援教育支援員についても、障害のある子どもに適切に対応できるよう必要な措置を講じるべき。

 

 E 発達障害等に対応した教材や指導方法等の工夫改善

○発達障害を含む障害のある児童生徒に対して、ICT等の技術を活用した指導内容・方法等の工夫改善や、より理解しやすい教科書等の教材の提供の仕組の在り方について研究を進め、必要な措置を講ずるべき。また、教師用指導書に発達障害に配慮した記述がなされるようにすることを含め、実際の授業の工夫改善につながる情報提供を行うべき。

 

 F 発達障害への理解啓発 

○発達障害について、学校、家庭、地域に対する理解啓発に取り組むべき。その際、映像等を通じて理解を図ることが効果的であることも踏まえ、メディアの協力を得る視点が重要である。

また、今年度スタートする発達障害教育情報センターにおいて発達障害に関する理解啓発を進めることとしているが、その際、発達障害に関する親の会等との連携を図るなど、保護者の視点に立った取組を推進すべき。

 

 G 発達障害者支援センター等関係機関との連携強化

○発達障害に関して、就学前から就労まで一貫した総合的な支援を行うため、各都道府県に設置されている発達障害者支援センターなど、保健・医療、福祉、雇用等の関係機関との連携を推進すべき。

 

 

(3)特別支援教育セカンドステージに向けた総合的な検討の推進

○義務教育段階については、量的な体制整備から質的な充実へ施策の重点を移行させる必要。また、幼稚園、高等学校については、それぞれの発達段階に対応した有効な支援システムを明確にすることが必要。このため、質の高い特別支援教育の実現に向け、特別支援教育の現状について分析評価した上で、現在の課題を明らかにし検討を行う総合的な調査研究を実施すべき。

 

 

 以上のとおり、特別支援教育の重要性を踏まえ、特別支援教育の喫緊の課 題に対応するとともに、特別支援教育体制を確かなものとする観点から、今年度スタートした発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業や発達障害教育情報センターの一層の充実を含め、特別支援教育予算の拡充を図ることが必要不可欠であり、その旨提言する。