□文科省定義と診断基準
□ADHD
□PDD
特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議答申2003/03/28:今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)の参考資料:定義と判断基準(試案)等
1.ADHDの定義と判断基準(試案) |
1-1.ADHDの定義
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。 また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。 |
※ | アメリカ精神医学会によるDSM−(精神疾患の診断・統計マニュアル:第4版)を参考にした。 |
1-2.>ADHDの判断基準
以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。>
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※ | アメリカにおけるチェックリストADHD−RS(学校用)、及びDSM−を参考にした。 |
2.高機能自閉症の定義と判断基準(試案) |
2-1.高機能自閉症の定義
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。 また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。 |
※ | 本定義は、DSM−を参考にした。 |
※ | アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである(DSM-を参照)。なお、高機能自閉症やアスペルガー症候群は、広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders・・・PDDと略称)に分類されるものである(DSM-を参照)。 |
2-2.高機能自閉症の判断基準
以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。
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※ | DSM−及び、スウェーデンで開発された高機能自閉症スペクトラムのスクリーニング質問紙ASSQを参考にした。 | ||||||
※ | 定義、判断基準についての留意事項
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3. 学校における実態把握のための観点(試案) |
3-1. 実態把握の基本方針と留意事項
(基本方針)
○ | 学校における実態把握については、担任教員等の気付きを促すことを目的とすることが重要である。 |
○ | 障害種別を判断するためではなく、行動面や対人関係において特別な教育的支援の必要性を判断するための観点であることを認識する必要がある。 |
○ | 学校では、校内委員会を設置し、同委員会において、担任等の気付きや該当児童生徒に見られる様々な活動の実態を整理し、専門家チームで活用できるようにすることが求められる。専門家チームでは、このような学校における実態把握をも含めて、総合的に判断をすることになる。 |
(留意事項)
○ | ADHDや高機能自閉症等、障害の医学的診断は医師が行うものであるが、教員や保護者は、学校生活や家庭生活の中での状態を把握する必要がある。 |
○ | 授業や学校生活において、実際に見られる様々な特徴を把握できるような観点を設定する必要がある。 |
○ | 高機能自閉症等の一部には、行動としては現れにくい児童生徒の内面的な困難さもあることに留意する必要がある。 |
○ | 授業等における担任の気付きを、注意集中困難、多動性、衝動性、対人関係、言葉の発達、興味・関心などの観点から、その状態や頻度について整理し、校内委員会に報告する。 |
3-2.実態把握のための観点(試案)
<知的発達の状況>
<教科指導における気付き>
<行動上の気付き>
<コミュニケーションや言葉遣いにおける気付き>
<対人関係における気付き>
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※ | DSM−、ASSQ、「ADHD児の理解と学級経営」(仙台市教育センター、平成13年度)、「注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童・生徒の指導の在り方に関する研究」 (東京都立教育研究所、平成11年度)を参考にした。 |
4.指導方法 |
4-1. 基本的な考え
(ADHDの指導・高機能自閉症等の指導共通)
・ | ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒の教育的ニーズは多様であることから、一人一人の実態把握を、単に行動上の問題の把握のみならず、教科学習や対人関係の形成の状況、学校生活への適応状況など様々な観点から行うことが必要である。 |
・ | ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒の保護者、クラスメイト、クラスメイトの保護者への理解推進も積極的に進める必要がある。 |
・ | ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒に対して、個別の指導計画による指導が見られ、効果を上げている例も見られるが、当該児童生徒への一層の教育の充実ということから、その作成にあたっては、通級指導教室や特殊学級など校内の特殊教育の担当者からの支援を得ることが望ましい。個別の指導計画を作成し、運用するに当たっては、保護者への十分な理解と連携が求められる。個別の指導計画の作成や運用の在り方については、研究開発学校における取り組みの成果等を参考に検討することが考えられる。 |
・ | 知的発達には遅れがないものの学習面や行動面で様々な状態を示し、社会的適応にも困難を示すことがあることから、生徒によっては中等教育段階の早い時期から、障害の特性に配慮した職業に関する教育が必要である。 |
(ADHDの指導)
・ | 多動行動等に対応するためには、小学生など低年齢段階からの適切な指導が重要である。 |
・ | 生活技能(主として対人関係技能)を身に付けることが大切である。その際には、適切な行動に向けての自己管理能力を高めることも大切である。 |
・ | 問題行動、非行等への配慮が必要である。 |
・ | 自信回復や自尊心(自己有能感)の確立、さらには自分で自分の行動を振り返ったり、他者が自分をどうとらえているのかを理解したりすることも大切である。 |
・ | 投薬(中枢刺激剤等)の効果が認められる場合があることから、医療との連携が重要である。 |
(高機能自閉症等の指導)
・ | 光や音、身体接触などの刺激への過敏性があること、問題を全体的に理解することが不得意であること、過去の不快な体験を思い出してパニック等を起こすこと等の特性に対応することが大切である。 |
・ | 主として心因性の要因による選択性かん黙等への対応とは異なり、その特性に応じた指導ができるように指導の場に関する検討が必要である。その際には、通常の学級における特性に応じた補充的な教育内容やその指導方法等について検討が必要である。 |
・ | 2次的障害が顕著に現れる場合もあることから、特に思春期には丁寧な対応が重要である。 |
・ | アスペルガー症候群は、言語機能に大きな困難性を有しないが、その他の行動特性は自閉症と同様であることから、教育的対応上は高機能自閉症と同様と考えることができる。 |
4-2. 具体的な配慮
(ADHDの指導・高機能自閉症等の指導共通)
(a) | 共感的理解の態度をもち、児童生徒の長所や良さを見つけ、それを大切にした対応を図る。 |
(b) | 社会生活を営む上で必要な様々な技能を高める(ソーシャルスキルトレーニング)。それらは、ゲーム、競技、ロールプレイ等による方法が有効である。 |
(c) | 短い言葉で個別的な指示をする(受け入れやすい情報提示、具体的で理解しやすい情報提示)。 |
(d) | いじめ、不登校などに対応する。 |
(e) | 本人自らが障害の行動特性を理解し、その中で課題とその可能な解決法、目標を持つなど対処方法を編み出すよう支援する。 |
(f) | 校内の支援体制を整える。 |
(g) | 周囲の子どもへの理解と配慮を推進する。 |
(h) | 通級指導教室での自信と意欲の回復を図る(スモールステップでの指導等による)。 |
(i) | 通級指導教室担当者は、在籍学級担任への児童生徒の実態や学習・行動の状況等に関する情報提供や助言をする。 |
(j) | 医療機関と連携する。 |
(ADHDの指導)
(a) | 叱責よりは、できたことを褒める対応をする。 |
(b) | 問題行動への対応では、行動観察から出現の傾向・共通性・メッセージを読み取る。 |
(c) | 不適応をおこしている行動については、その児童生徒と一緒に解決の約束を決め、自力ですることと支援が必要な部分を明確にしておく。 |
(d) | グループ活動でのメンバー構成に配慮する。 |
(e) | 刺激の少ない学習環境(机の位置)を設定する。 |
(高機能自閉症等の指導)
(a) | 図形や文字による視覚的情報の理解能力が優れていることを活用する。 |
(b) | 学習環境を本人に分かりやすく整理し提示する等の構造化する。 |
(c) | 問題行動への対応では、問題行動は表現方法のひとつとして理解し、それを別の方法で表現することを教える。 |
(d) | 環境の構造化のアイディアを取り入れること(見通しがもてる工夫や、ケースによっては個別的な指導ができる刺激の少ないコーナーや部屋の活用等)が効果的である。 |
(e) | 情報の受け入れ方や心情の理解などにおいて、障害のない者とは大きく異なることを踏まえた対応をする。 |
※ | 上記の具体的な配慮は、すべての年齢層に共通というわけではなく、年齢によって、異なることに注意する必要がある。また、同年齢であっても、個々の状態に応じて配慮事項は変わることに注意する必要がある。 |
※ | また、いくつかの指導実践では、通常の学級で可能な配慮と、通級指導教室等における配慮が有効な場合もあることが報告されている。 |