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文科省定義:学習障害(LD)の定義 <Learning Disabilities
(平成11年7月の「学習障害児に対する指導について(報告)」より)
 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
 学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。



医学的定義
CD-10 臨床記述と診断ガイドライン 医学書院 

F8心理的発達の障害DISORDERS OF PSYCHOLOGICAL DEVELOPMENT

□概要

F80  会話および言語の特異的発達障害

    F800  特異的会話構音障害

    F801 表出性言語障害

    F802  受容性言語障害

    F803  てんかんにともなう獲得性[後天性]失語[症]

         (ランドウークレフナー症候群)

    F808  他の会話および言語の発達障害

    F809  会話および言語の発達障害,特定不能のもの

 

F81 学力[学習能力]の特異的発達障害

    F810  特異的読字障害

    F811 特異的綴字[書字]障害

    F812  特異的算数能力障害[算数能力の特異的障害]

    F813  学力[学習能力]の混合性障害

    F818  他の学力[学習能力]の発達障害

    F819  学力[学習能力]の発達障害,特定不能のもの

 

F82  運動機能の特異的発達障害

 

F83  混合性特異的発達障害

 

□序論

 F80F89に含まれる障害には,次のような共通点がある:

a)発症は常に乳幼児期あるいは小児期であること.

b)中枢神経系の生物学的成熟に深く関係した機能発達の障害あるいは遅滞であること.そして

C)精神障害の多くを特徴づけている,寛解や再発がみられない安定した経過であること.

 障害される機能は多くの症例で,言語,視空間技能および/または協調運動が含まれる.成長するにつれて,これらの障害は次第に軽快するのが特徴である(しかし成人にいたっても軽度の機能障害は残存することが多い).通常,

遅滞や機能障害ははっきりと認められるずっと前から存在するもので,正常な発達期間が先行することはない.これらの障害は通常,男児で女児に比べて数倍多くみられる.

 発達障害の特徴として,同様の障害あるいは類似した障害が家族歴に認められるのがふつうであり,多くの症例(しかしすべてではない)で遺伝的要因が病因として重要な役割を演じているらしい証拠がある.環境要因が障害を受けた機能の発達に影響を与えることはしばしばあるが,多くの例で決定的な影響を与えることはない.一般的にかなりの一致はみられているものの,しかしながら,この節の疾患の包括的概念については,多くの症例で病因は不明で,それぞれの発達障害の境界や正確な下位区分のいずれもが不明瞭のままである.さらに,この節には,上記の広い概念的規定を完全に満たさない次の2つの型の病態も含まれる.第一に,疑いのない正常な発達の時期が先行するような障害,すなわち,小児期崩壊性障害,ランドウークレフナー(LandauKleffner)症候群,そして自閉症の一部の症例などである.これらの病態は,発症は異なるが,その特徴や臨床経過に発達障害のグループと多くの類似点があるために,ここに含まれる.さらにこれらの病態が病因的に相違があるかどうか不明であるからでもある.第二に,発達する諸機能は,遅れというよりもむしろ本来は垣且という用語で定義されるものである.これはとくに自閉症に当てはまる.自閉性障害がこの節に含まれるのは,偏りという用語で定義されるにせよ,さまざまな程度の発達遅滞がほとんど常にみられるためである.さらに,個々の症例の特色と近縁群であるということの2点で,他の発達障害と重なるためでもある。

 

F81 学力[学習能力]の特異的発達障害 Specific Developmental Disorders of Scholastic Skills

 学力の特異的発達障害の概念は,会話および言語の特異的発達障害の概念(F80.一参照)に対応し,その定義や評価についての問題点は本質的に同じである.これらは,技能の正常な習得パターンが発達早期から損なわれる障害である.その欠陥は単なる学習の機会の欠如のためではなく,またいかなる型の後天的な脳損傷や疾患によるものでもない.むしろ,障害は多くはある種の生物学的な機能不全に由来する認知過程の異常から生じたものと考えられる.他のほとんどの発達障害のように,この障害もだいたいは女児より男

児によく起こる.

 診断にあたっては,5つの問題点が生じる.第一に,学業成績の正常範囲内の偏りからこの障害を鑑別する必要がある.この論点は言語障害に対してのものと同様であり,異常を評価するために提案された4つの基準が同じく適用される(もちろし言語能力の基準を学業成績に適用するさいには修正が必要である).第二に,発達経過を考慮に入れる必要がある.このことは2つの異なった理由により重要である:

a)重症度:7歳時と14歳時における1年間の読みの遅れは,まったく違った意味をもっている.

b)パターンの変化:就学前の言語遅滞では,話し言葉に関する限り遅滞は解消されるが,引き続き特異的読字遅滞が起こってくるのがふつうで  ある.次いでこの障害は青年期になって解消する.成人早期に残される 主な問題は重度の語の綴りの障害となる.病態は変わらないが,加齢にともなってそのパターンが変化する.診断基準はこのような発達にともなう変化を考慮する必要がある.

 第三に,学力は,学び教えられなければならないという難しさがある.学力は生物学的成熟だけの関数ではない.小児の技能の水準は,子ども自身の個人的特性によるのはもちろんのこと,必然的に家族環境と学校教育にもよる.あいにくと適切な経験の欠如による学業困難を,ある個々の障害による学業困難から鑑別する簡単で明白な方法はない.この区別が現実的で,臨床的に妥当であることを十分に支持する根拠はあるが,個々の症例では診断は難しい.第四に,認知過程の異常が基礎にあるという仮説は種々の研究が支持しているが,個々の小児で,読字困難の基礎となる異常を,貧弱な読字技能から生じる,あるいはそれと関係した異常から鑑別する簡単な方法はない.

読みの障害が複数の型の認知の異常に由来しているかもしれないという所見が,この間題を複雑にしている.第五に,学力の特異的発達障害を下位分類する最良の方法がいぜんとして不確定のままであるということである.

 小児は家庭や学校で,読み,書き,綴り,算数の計算の導入を受けて学習する.正規の学校教育が始まる年齢,学校で習う授業科目,そして以後それぞれの年齢で小児が習得するのを期待される技能は,国によって大きな相違がある.この期得度の不均等さは小学校時代(すなわち11歳ごろになるまで)でより大きいものであり,そのため国際間で妥当性のある学力の障害の操作的な定義を作成するさいの論点は複雑になっている.

 たとえそのようであっても,すべての教育状況の中で,学童のそれぞれの年齢群において学業の達成に幅があり,ある小児で全体的知能水準との関連からみて,特定の領域での成績が低いということがあるのは,明らかである.

 学力の特異的発達障害(SDDSS)は,学力の習得に特異的で重大な障害があることが明らかな障害群からなっている.これらの学習の障害は,他の障害(たとえば精神遅滞,著しい神経学的欠陥,矯正できない視力や聴力上の問題,あるいは情緒障害)に併発して起こることはあっても,その直接の結果ではない.SDDSSはしばしば他の臨床症候群(たとえば注意欠陥障害または行為障害),あるいは他の発達障害(たとえば運動機能の特異的発達障害あるいは会話および言語の特異的発達障害)とともに起こる.

 SDDSSの病因は不明であるが,非生物学的な要素(たとえば学習の機会や教育の質)と互いに影響しあって発現するような生物学的な要素を第一義的なものとする想定がある.これらの障害は生物学的な成熟に関連しているが,この障害をもつ小児が常に正常範囲の下限にあり,やがて「追いつく」だろうということを意味していない.多くの症例で,障害の痕跡はおそらく青年期から成人期まで継続する.それにもかかわらず,診断上必要な点は,学校教育の早期に何らかの形で障害が現れることである.子どもは学年がすすむ

と学業成績が低下することがあるが(興味の不足,欠陥のある教育,情緒障害,課題が要求するパターンの増加や変更のために),SDDSSの概念にはこのような問題は含まれない.

診断ガイドラインビの学力の特異的発達障害の診断にも,いくつかの基本的な必要条件がある.第一に,特定された学力に,臨床的に有意な程度の障害がなければならない.これは,教育用語から定義されるような重症度(すなわち,学童の3%以下に起こると予想される程度),先行する発達上の問題(すなわち,学業困難は就学前に発達遅滞あるいは偏りが先行している一最も多いのは会話や言語で−),関連のある障害(注意障害,多動,情緒障害あるいは行為障害のような),パターン(すなわち,正常な発達には通常みられない質的異常の存在),そして反応性(すなわち,家庭および/または学校での援助がふえても,学

業困難が迅速にあるいは容易には軽減することがない)に基づいて判断しうる.

 第二に,障害は単に精神遅滞あるいは比較的軽度の全体的知能障害から説明できないという意味で,特異的なものでなければならない.IQと学業成績は正確には並行しないので,この区別は個別的に施行される標準化された,関連する文化や教育システムに適合した,学力とIQの検査に基づいてのみなされうる.このような試験は,どの暦年齢のどのIQの水準でも,平均的に予想される達成水準に関する資料を提供する統計表と関連させて使用すべきである.この統計表が必要となるのは,統計学的回帰効果が重要だからである.精神年齢から学業成績年齢を差し引くことに基づく診断は,重大な誤りと結びつきやすい.しかしながら,日常の臨床では,ほとんどの例でそこまでは要求されないであろう.したがって,臨床ガイドラインはただ単に,小児の達成レベルがその小児の精神年齢から期待されるレベルよりもはるかに下でなければならない,ということになる.

 第三に,障害は発達性のものでなければならず,その意味は,教育の早期から存在し,後になって教育過程で獲得されたものであってはならない,ということである.小児の学業における進歩のあとは,このことに関して証拠を与えるはずである.

 第四に,学業困難の十分な理由となりうる外的要因があってはならない.上で指摘したように,一般にSDDSSの診断は,小児の発展にとって本質的な要因に関連した学業成績の臨床的に有意な障害についての,明確な証拠に基礎を置くべきである.しかしながら,効果的に学習するためには,小児は適切な学習の機会をもたなければならない.したがって,もし学業成績の不良が,かなり長期間学校を欠席し,家庭でも教えられずにいることや,非常に不十分な教育しか受けられないことの直接の結果であることが明らかならば,その障害はここに分類すべきではない.学校を頻回に欠席したり,転校のために教育が中断されるだけでは,通常,SDDSSの診断をくだすのに必要な程度の学業遅滞を生じさせるに十分でない.しかしながら,学校教育が貧困であれば,問題を複雑にしたり大きくしたりするかもしれないので,このような場合は学校の要因を,ICD10・第]]T章からZコードでコードすべきである.

 第五に,SDDSSは矯正されない視覚あるいは聴覚の障害に直接起因するものであってはならない.


 〔鑑別診断〕明らかに診断できるような神経学的障害がまったくない状態で生じた
SDDSSと,脳性麻痺のような,何らかの神経学的な状態で二次的に生じたSDDSSとを鑑別することは,臨床的にきわめて必要なことである.実際この鑑別が難しいことがしばしばあり(多数の「ソフトな」神経学的徴候の意義が不確実であるため),SDDSSのパターンあるいは経過のいずれにおいても,明らかな神経学的機能不全の有無による明確な鑑別を示す研究所見もない.したがって,神経学的機能不全は診断基準の一部を形成するものではないが,しかし関連する障害があれば,適切な神経学的部門の分類の中に別にコードする必要がある.

 

F810  特異的読字障害 Specific reading disorder

 この障害は読字力の発達の著しい特異的障害を主要徴候とするもので,単に精神年齢,視覚障害の程度あるいは不適切な学校教育によって説明されるものではない.読みの理解力,読みによる単語認知,声による読字力,および読みを必要とする課題の出来ばえがすべて障害されることがある.綴字困難が,特異的読字障害にともなうことが多く,読字がかなり進歩したあとでさえ,青年期に入っても残存していることがしばしばある.特異的読字障害をもった小児は,しばしば会話および言語の特異的発達障害の既往をもっており,現在の言語機能を包括的に評価することによって,同時に発生している些細な障害が明らかになることがしばしばある.学業上の失敗に加えて,とくにそれ以後の小学校や中学校時代には学校を欠席したり,社会適応の諸問題が併発するこ上が多い.この病態は現在知られている言語すべてにみられるが,言語の性質や書かれる文字によって出現頻度が変わってくるかどうかについては,確かなことはわからない.

 

診断ガイドライン

 小児の読みの出来ばえは,年齢,全体的知能,学校での処遇をもとに予想される水準を明らかに下まわっていなければならない.これは個別的に施行される標準化された,読みの正確さと理解力の検査に基づいて評価するのが最もよい.読みに関する問題の正確な性質は,予想される読みの水準,そして言語,文字に依存する.しかしながら,アルファベットの早期の学習段階では,アルファベットを暗唱すること,文字の正確な名称を言うこと,簡単な韻をふむこと,そして(正常な聴力であるにもかかわらず)音を分析したり分類したりすることに困難がみられる場合がある.のちになって次のような音読の誤りが起こる場合がある:

a)語あるいは語音の一部の省略,置きかえ,歪み,あるいは付加.

b)読みの速度が遅いこと.

C)読みはじめを誤る,なかなか読み出せない,あるいは本文の中で「読んでいる個所を見失う」こと,および不正確な言い回し.

d)文章の中での単語あるいは単語の中での文字の反転.

 また次に示されるような読みの理解力の不足がみられることもある.

e)読んだことを再生できない.

f)読んだ素材から結論や推論を引き出すことができない.

g)読んだ物語についての質問に答えるために,特定の物語から得られた情報よりむしろ背景的な情報としての一般的知識を使用すること.

 児童期の後期や成人期において,綴字困難が読字の困難よりもいっそう重篤になるのがふつうである.綴字困難はしばしば発音の誤りをともなっているのが特徴であり,読字と綴字の問題はともに一部は音声学的な解析の障害に由来しているようにみえる.発音通りでない言語を読まなければならないさいの,綴字の誤りの性質や頻度についてはほとんど知られていないし,非アルファベット性文字における誤りの型についてもほとんど知られていない.

 読みの特異的発達障害には,会話あるいは言語の発達障害の既往が先行するのが一般的である.他の場合には,小児は言語の発達指標を正常の年齢で通過することがあり,音の分類や,韻をふむことの問題,そしておそらく話音の識別,聴覚的経時的記憶,聴覚性の連想の欠陥で示されるような聴覚性処理の困難をもっている.またある場合には視覚性処理に問題(たとえば文字識別)がみられることがある.しかしながら,これらは,読字を学習し始めたばかりの小児には一般的にみられることであり,したがって,読字の貧困さに直接関係するものではないであろう.しばしば多動や衝動にともなって注意の困難もまた一般的である.就学前の発達困難の細かいパターンは,その重症度がそうであるように,子どもによってかなりさまざまであるが,それでもなおこのような困難は通常(常にではないが)存在している.

 情緒障害および/または行為障害の合併も学童期にはよくみられる.情緒的な問題は学齢の早期にみられるのがふつうであるが,行為障害や多動症候群が児童期後期や青年期に最も多く存在するもののように思われる.自己評価の低さもふつうであり,学校への適応や友人関係もしばしば問題となる.

 〈含〉「読みの遅れ」

    発達性失読症

    特異的読字遅滞

    読字障害にともなう綴字困難

 〈除〉後天性失読および綴字障害(R480

    情緒障害に二次的に生じた後天性読字困難(F93.−)

    読字困難をともなわない綴字障害(F811

 

F811 特異的綴字[書字]障害 Specific spelling disorder

 この障害の主要徴候は特異的読字障害の既往の室生,綴字力の発達における特異的で有意な障害であり,単に低い精神年齢,視力の問題あるいは不適切な学校教育では説明できない障害である.口頭で綴りを言う力と語を正確に書き出す力のいずれも障害される.手で書くことだけが問題である小児は,含めるべきではないが,ある場合には綴字の困難が書くことの問題をともなっていることがある.特異的読字障害に通常みられたパターンと違って,この綴字の誤りは音声学的には正確である傾向が強い.

 

診断ガイドライン

 小児の綴字の出来ばえは,全体的知能,学校での処遇に基づいて予想される水準を明らかに下まわっていなければならず,そして最も好ましいのは個別的に施行される標準化された綴字検査に基づいて評価することである.小児の読字能力は(正確さと理解力の両方に関して)正常範囲内にあり,重大な読字困難の既往があってはならない.綴字における困難は主としてきわめて不適切な教育,視覚,聴覚あるいは神経学的機能の欠陥の直接的な影響によるものがあってはならず,そして神経学的,精神医学的,あるいは他の障害の結果として獲得したものであってはならない.

 「純粋な」綴字障害は,綴字困難に関連した読字障害と違うことは知られているが,特異的綴字障害の前駆様態,経過,関連因子,あるいは転帰についてはほとんど知られていない.

 (含〉特異的綴字遅滞(読字障害をともなわない)

 (除〉後天性綴字障害(R488

    読字障害に関連した綴字困難(F810

    主に不適切な教育に帰する綴字困難(Z558

 

F812  特異的算数能力障害[算数能力の特異的障害]

Specific disorder of arithmetical skills

 この障害には,ただ単に一般的な精神遅滞あるいは非常に不適切な学校教育だけでは説明できないような算数力の特異的障害が含まれている.この障害は(代数学,三角法,幾何学あるいは微積分学のような,より抽象的な数学力よりはむしろ)加減乗除のような基本的な計算力の習得に関係している.

 

診断ガイドライン

 小児の算数の出来ばえは,年齢,全体的知能,学校での処遇に基づいて予想される水準を明らかに下まわっていなければならず,そして最も好ましいのは個別的に施行される標準化された算数テストに基づいて評価することである.読字力と綴字力は精神年齢から予想しうる正常な範囲内になければならず,なるべく個別的に施行される適切に標準化された検査で評価すべきである.算数の困難は,主としてきわめて不適切な教育,視覚,聴覚あるいは神経学的機能の欠陥の直接的な影響によるものであってはならず,そして神経学的,精神医学的,あるいは他の障害の結果として獲得されたものであってもならない.

 算数障害は読字障害よりも研究されていないので,前駆様態,経過,関連因子および転帰についての知識はごく限られている.しかしながら,この障害のある小児は聴覚一知覚力と言語力は正常範囲内にある傾向がみられる.しかし視覚カー空間および視覚一知覚力は損なわれている.このことは多くの読字障害の小児と対照的である.社会一情緒一行動上の問題をともなっている小児もあるが,その特徴や出現頻度についてはほとんど知られていない.とりわけ社会的相互関係の困難が共通している,と示唆されてきている.

 算数の困難さはさまざまな現れ方をするが,次のようなものが含まれる.特殊な算数操作の基本となる概念を理解できないこと.算数用語や符号の理解に欠けること.数字を認識しないこと.標準的な算数操作を行うことが困難であること.考えている算数問題に関してどの数字が適当かを理解することが困難であること.数字を正しく並べることが困難である,あるいは計算中に小数や記号を挿入することが困難であること.算数計算の空間的な組立てが下手であること.掛け算表を十分に学習できないこと.

 〈含〉発達性計算不能

    発達性算数障害

    発達性ゲルストマン症候群

 〈除〉後天性算数障害(計算不能)(R488

    読字あるいは綴字障害に関連した算数の困難(F811

    主に不適切な教育に帰する算数の困難(Z558

 

 

F813  学力[学習能力]の混合性障害

  Mixed disorder of scholastic skills

 これは定義が不完全で,適切に概念化されていないが,(しかし必要な)障害の残遺力テゴリーであり,算数と,読字あるいは綴字の両方が明らかに損なわれているが,ただ単に全般的な精神遅滞あるいはきわめて不適切な学校教育によっては説明できないものである.このカテゴリーは,F812およびF810もしくはF811の基準を満たす障害に使用すべきである.

 〈除〉算数能力の特異的障害(F812

    特異的読字障害(F810

    特異的綴字障害(F811

 

F818 他の学力[学習能力]の発達障害 

Other developmental disorders of scholastic skills

 〈含〉発達性表出性綴字障害

 

F819 学力[学習能力]の発達障害,特定不能のもの